ぎっくり腰は、急に腰へ強い痛みが起こった状態を指す呼び名で、特定の病名ではありません。はっきりした原因が分からないことも多く、多くは時間の経過とともに少しずつ和らいでいきます。ただし、痛みが強い時期にとる行動によっては、つらさが長引いたり、動きにくさが増したりすることがあります。ここでは避けたい行動と、その理由、そして代わりにできる行動を整理します。
| 避けたい行動 | 理由 | 代わりの行動 |
|---|---|---|
| 強いストレッチ | 痛みが強い時期に無理に伸ばすと、かえって刺激になり動きづらさが増すことがあります | 痛くない範囲でゆっくり体を動かし、楽な姿勢を探します |
| 長い寝たきり | じっと寝続けると回復が遅れやすいと考えられています | 短い休息をはさみつつ、可能な範囲で日常の動作を続けます |
| 強く押す・ひねる | 強い圧迫や急なひねりは痛みを悪化させる場合があります | 痛みの少ない範囲で軽く体勢を変え、無理な力を加えません |
| 急な重労働 | 重い物を勢いよく持つと腰への負担が集中します | 荷物を分け、膝を曲げて体に近づけて持ちます |
| 冷温つけっぱなし | 長時間当て続けると皮膚のトラブルにつながることがあります | 時間を区切り、心地よく感じる方を選びます |
| 薬の重複 | 成分が重なる薬を同時に使うと想定外の負担がかかることがあります | 成分表示を確認し、薬剤師や医師に相談します |
| 危険サインの放置 | 一部の症状は早めの医学的評価が必要な目安になります | 後述のサインがあれば自己判断せず受診を検討します |
安静の取りすぎに注意する
痛みが強いと動くのが怖くなり、長く横になり続けたくなります。しかし、じっと寝続けるよりも、痛くない範囲で体を動かした方が回復を助けると考えられています(Minds 腰痛、NHS Back pain)。安静そのものが悪いわけではなく、必要な休息は取りつつ、寝たきりの状態を長引かせないことが大切です。
代わりの行動
痛みのピークでは無理をせず、短い休息をとります。少し落ち着いてきたら、家の中を歩く、トイレや食事のために起き上がるなど、日常の動作から少しずつ再開します。起き上がるときは一度横向きになり、手で体を支えながらゆっくり体を起こすと腰への負担を減らせます。動いてみて痛みが強く増す場合は、その動作を控えます。
強いストレッチをしない
「早く伸ばして治したい」と、痛い部分を無理に引き伸ばす人がいます。痛みが強い時期に強いストレッチをすると、腰への刺激が増して動きづらさが強まることがあります。反動をつけて前屈する、体を大きくそらすといった動きは特に負担が大きくなりがちです。
代わりの行動
痛みを感じない範囲で、あお向けで膝を軽く立てる、横向きで体を丸めるなど、楽な姿勢をとります。呼吸を止めずにゆっくり体勢を変え、痛みが出る手前でとどめます。無理に可動域を広げようとせず、日を追って動ける範囲が戻ってくるのを待ちます。
強く押す・ひねる施術に頼りすぎない
痛い部分を強く押してもらう、勢いよくひねってもらうと、一時的に楽に感じることがあります。一方で、痛みが強い時期の強い圧迫や急なひねりは、症状を悪化させる場合があります。なお、ぎっくり腰の痛みを「骨のずれ」といった単一の原因で説明できるとは限らず、原因がはっきりしないことも多いとされています(日本整形外科学会 急性腰痛症)。
代わりの行動
強い刺激を求めるのではなく、痛みの少ない姿勢で体を休めることを優先します。体をほぐしたい場合も、軽く手を添える程度にとどめ、痛みが増す方向の力は加えません。痛みが長引く、あるいは強い場合は、自己判断で強い施術を続ける前に医療機関で相談します。
急な重労働を避ける
痛みが少し引くと、たまった家事や仕事を一気に片づけたくなります。しかし、回復途中で重い物を勢いよく持ち上げたり、中腰で長時間作業したりすると、腰への負担が一点に集中しやすくなります。特に、床の荷物を膝を伸ばしたまま持ち上げる動作や、体をひねりながら物を運ぶ動作は負担が大きくなります。
代わりの行動
荷物は小分けにし、膝を曲げて体に近づけ、上半身をまっすぐ保ったまま持ち上げます。運ぶときは足を動かして体ごと向きを変え、腰だけをひねらないようにします。長い作業はこまめに区切り、同じ姿勢を続けないようにします。
コルセットに頼りきりにしない
コルセットや腰用ベルトは、痛みが強い時期に腰を支え、動きの不安をやわらげる助けになることがあります。ただし、一日中つけっぱなしにして長期間頼り続けると、体を動かす機会が減ってしまうことがあります。
代わりの行動
痛みが強く動きにくい時間帯や、外出・作業のときに一時的に使い、痛みが和らいできたら使う時間を少しずつ減らしていきます。装着中も、痛くない範囲で体を動かすことを意識します。使い方に迷うときは医療機関で相談すると安心です。
冷やす・温めるをつけっぱなしにしない
冷やすか温めるかは、その時々で心地よく感じる方を選ぶ考え方が一般的で、どちらが必ず良いと決まっているわけではありません(NHS Back pain)。一方で、保冷剤やカイロを長時間肌に当て続けると、しびれや低温やけどなど皮膚のトラブルにつながることがあります。
代わりの行動
当てる時間を区切り、タオルなどを間にはさんで肌に直接触れないようにします。感覚が鈍い部分や皮膚が弱い部分への長時間の使用は避けます。どちらを選ぶか迷うときは、冷やす・温めるの考え方をまとめた冷やす・温めるの選び方もあわせてご確認ください。
薬を自己判断で重複させない
痛みを早く抑えたくて、市販薬と手持ちの薬を一緒に飲む、複数の痛み止めを続けて使う、といったことをすると、成分が重なって想定外の負担がかかる場合があります。同じような効果の薬でも、含まれる成分は製品ごとに異なります。
代わりの行動
薬を使う前にパッケージの成分表示や説明書を確認し、他に飲んでいる薬があるときは薬剤師や医師に相談します。持病がある方、妊娠中・授乳中の方は、特に自己判断を避けて相談すると安心です。痛みが強い時期の初期対応についてはぎっくり腰の直後の対処も参考になります。
危険サインを見逃さない
ぎっくり腰の多くは経過とともに落ち着いていきますが、次のような症状は、腰の痛み以外の問題が隠れていないかを確かめるための、医学的評価を検討する目安です。これらは診断が確定したことを意味するものではなく、あくまで受診を考えるきっかけとしてご覧ください(Minds 腰痛)。
- 尿や便が出にくい、または漏れるなど、排尿・排便の様子がいつもと違う
- 股や肛門の周りの感覚が鈍い、しびれる
- 両脚に力が入らない、立ち上がれない
- 転落や交通事故など、強い衝撃を受けたあとに痛みが出た
- 腰の痛みに加えて、胸やお腹に強い痛みがある
- 発熱や悪寒をともなう
- 痛みや動きにくさが急速に悪化している
代わりの行動
こうしたサインがあるときは、様子を見て自己判断を続けるのではなく、早めに医療機関を受診することを検討します。受診の判断に迷うときは、受診の目安もあわせてご確認ください。
よくある質問
痛みが強い日は一日中寝ていた方がよいですか
痛みのピークでは無理をせず休むことも必要ですが、長く寝続けるより、痛くない範囲で少しずつ体を動かす方が回復を助けると考えられています。トイレや食事のたびに起き上がるなど、日常の動作を続けられる範囲で保つとよいとされています。
ストレッチはいつから始めてよいですか
明確な日数の決まりはありません。痛みが強い時期は無理に伸ばさず、動いても痛みが増えにくくなってきたら、楽な範囲で少しずつ体を動かしていきます。反動をつける動きや、痛みが強く出る動きは控えます。
冷やすのと温めるのはどちらがよいですか
どちらが必ず良いと決まっているわけではなく、そのとき心地よく感じる方を選ぶ考え方が一般的です。いずれの場合も肌に直接長時間当て続けず、時間を区切って使います。
コルセットはずっとつけていた方がよいですか
痛みが強い時期の一時的な支えとして役立つことがありますが、一日中つけ続けて長期間頼り切ると、体を動かす機会が減ってしまうことがあります。痛みが和らいだら使う時間を減らしていくとよいでしょう。
市販の痛み止めを飲んでも大丈夫ですか
成分が重なる薬を一緒に飲まないよう、パッケージの表示や説明書を確認したうえで使います。他に薬を飲んでいる方、持病のある方、妊娠中・授乳中の方は、あらかじめ薬剤師や医師に相談すると安心です。
まとめ
ぎっくり腰では、強いストレッチや長い寝たきり、強い施術、急な重労働、冷温のつけっぱなし、薬の重複といった行動が、つらさを長引かせる要因になりやすいと考えられています。避けるだけで終わらせず、痛くない範囲で体を動かす、荷物を小分けにして正しい姿勢で持つ、当てる時間を区切る、成分を確認して相談するといった代わりの行動に置きかえていくことが大切です。あわせて、排尿・排便の異常や両脚の脱力などの危険サインがあるときは、自己判断を続けず早めの受診を検討してください。